2003年12月16日、ある公開ゼミに参加すべく東京・大岡山の東京工大に行った。ゼミの開始時間にはちょっと時間があったので、正門の傍にある東工大百年記念館に入った。この記念館は1881年に東工大の前進である東京職工学校が創立されて100年になることを記念して1987年に開館した建物で、会議室や食堂に加えて、展示コーナや特別展示質などがある。
1Fの展示コーナには、ちょうどナノテク関連の会議が構内で開催されているらしく、ポステーセッションの会場になっていた。地下に常設の特別展示質があり、無料で入ることができた。だれもいない、記帳だけ済まして、ゆっくりと見学した。
窯業関係、建設関係などの東工大で活躍した先人の紹介コーナがある。私はこの展示の中では、フェライトの開発に関するコーナに興味を持った。なぜか、私が書いた「おもしろ電気通信史」では紙面の都合で割愛してしまった日本の誇る発明のフェライトがこの東工大で行われたからである。
ソフトフェライト(磁心として使用するフェライト)を発明した。1930年末に特許の申請を行い、1935年に特許第98944号として権利は確定した。しかし、発明当初、この新しい物質が将来どのようになるか、どのように発展するか、だれも予想ができなかった。とりあえず特許の権利を抑えたという状況であった。
ハードフェライト(磁石として使用するフェライト)の発明者は東工大の加藤と武井であり、同じく1930年末に特許を申請し、1935年に特許第110822号として登録された。このソフトフェライトはOP磁石と命名され、引き続いて、この磁石の性能向上、製法の改善、用途の開発が行われた。ある物質が発明されてから、その用途が考えられていることに驚く。
これら二つの特許は展示室に陳列されていた。
ソフトフェライトの企業化はTDKの創立と同時に開始したが、当初フェライト磁心は利用の途がなく、その用途開発に多くの努力がなされた。1938年頃、安中(現在は電気の会社でアンリツ)が船舶用無線機の中間周波数トランスのコアとして使用されたのが最初である。1940年には松下電器でラジオのμ同調方式を開発し、これに使用するフェライトコアを大量に購入したが、第2次世界大戦の開戦とともに、中止となった。そして代わってソフトフェライトは飛行機の通信用アンテナのコアとして多く利用された。
さて、この特別展示室には、2000年にノーベル賞を受賞した白川秀樹博士のコーナがあった。東工大の理工学部を1961年3月に卒業している。「東工大クロニクル」という広報紙の2000年11月号は臨時特集号であり、展示室の入り口に積んであった。以下は白川博士コーナの写真である。
白川博士を紹介するパネル
ノーベル賞受賞式の模様
ノーベル賞の賞状のコピーが展示
(注:パネルをデジカメで撮影、照明などが映りこんでおり、ちょっと見難い)