27回サピエンス「2005年世界物理年アインシュタインは超えられるか」の参観の記

 

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●主催  日経サイエンス社
●協賛  (株)日立ハイテクノロジーズ
●日時  5月14日(土)13001700
●会場  日経ホール(東京都千代田区大手町1--5 日本経済新聞社8F)

アインシュタインが相対論や光量子仮説などを相次いで発表した「奇跡の年」1905年から100年。国連は2005年を「世界物理年」と定め、世界中でアインシュタインの遺産を見直す動きが広がっている。極微の素粒子の世界から巨大な宇宙の理論まで、既成概念を打ち破るその革新的な成果は、20世紀の科学技術を爆発的に進展させるとともに、今も最先端の研究の発展に新しい光を投げかけている。数奇な運命をたどった天才物理学者アインシュタインの横顔に迫りながらその業績と現在の研究との密接なかかわりをひも解き、21世紀の今後の新しい科学技術の展開を探る。

【プレゼンテーション】
●天才物理学者の素顔に迫る  講師/杉元賢治(すぎもと・けんじ)  近畿大学教職教育部 教授

●ボーアとの論争に見る量子情報通信技術の原点  講師/井元信之(いもと・のぶゆき)  大阪大学大学院基礎工学研究科 教授

●アインシュタインの夢が紡いだ最新の宇宙像  講師/ 白水徹也(しろみず・てつや)  東京工業大学大学院理工学研究科 助教授

【パネルディスカッション】
●アインシュタインの遺産と21世紀の科学技術
パネリスト/杉元賢治、井元信之、白水徹也

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以上のシンポジウムに参加した感想など

1.杉本さんの講演
・持ち時間30分で、アインシュタインの生い立ちから研究業績までの紹介で、一般的な話で終わった。特にメモする事項はなかった。

2.井本さんの講演
・ボーアとアインシュタインの量子に関する論争は、単にサイエンスの論争ではなく、こうした論争が今日の「量子情報通信技術(量子コンピュータ、量子暗号技術)」の原点になっている。
・量子コンピュータとは、定義にもよるが、素因数分解などが可能なコンピュータのことである。100桁の数以上のステップ(ステップ:例えば6×6=36という計算を行なうことが1ステップ)要する計算問題はこの世では解くことができない、とされてきた。例として、1000桁から5000桁の素因数分解は現在のコンピュータでは計算ができない。このことが、現在使用されている暗号技術・情報セキュリティの論拠になっている。
しかし、1994年に「量子コンピュータ」の概念が提案され、こうした計算問題は解くことができる、可能性が出てきた。こうした量子コンピュータは、アインシュタインの直接的な研究成果ではないが、量子論に疑問を感じ、量子論の推進者であったボーアに対して、アインシュタインは徹底的な論争を挑んだ。この論争で、ボーア側は量子論を発展させることができた。
(三浦の感想:こうした観点から言えば、アインシュタインはコンピュータ技術の促進者として、扱うことができる。)

3.白水さんの講演
・太陽を直径3km程度の大きさに凝縮することができれば、太陽はブラックホールとなる。

4、質疑応答から
Q:アインシュタインの業績としては著名な「相対性理論」に対してではなく、「光量子仮説」に対してアインシュタインはノーベル賞を受賞した。これはなぜか?
A1:ノーベル賞の選考委員の中に、相対性理論が嫌いな科学者がいたから、と聞いたことがある。
A2:光量子仮説は他の科学者との論争もなく、受け入れられていた。光量子仮説を対する受賞には問題はなかった。 一方、相対性理論は哲学的な側面も有り、この理論を支持する人もいるが、受け入れない人もおり、学問の評価としては複雑な側面を持っていた。
A3:ノーベル賞の目的は「平和に役立つ研究」を対象としている。相対性理論は確かに太陽によって光が曲げられるという日食観測データから、理論的に正しいということが証明されてはいたが、光量子説は、より人の為に有効な技術の基となると判断されたものかもしれない。

  

写真:パネル討議から 

 

参考:このシンポジウムの内容は、近々「日経サイエンス」誌に掲載されるそうです。興味のある方はこの雑誌を読んでください。